“遅かれ早かれ、そろって斉射を行っていた長い横隊が崩れはじめる。混乱のさなか、火薬の煙と銃の轟きと負傷者の悲鳴に包まれるうちに、兵士は機械の歯車からひとりの人間に戻り、自分のやりたいことをやりはじめる。銃の装填をする者もいれば、武器を手渡す者、負傷者の介抱をする者がいる。わずかながら逃げだす者もいるし、煙に巻かれて迷う者、手ごろなくぼみを見つけて身を隠す者もいる。そしてほんのひと握りの兵士だけが発砲を続けるのだ。
第二次世界大戦中の資料にかぎらず、無数の歴史資料が伝えているのはこういうことだ。すなわち、先填め式マスケット時代、ほとんどの兵士は戦闘中にせっせと別の仕事をしていたのである。
”
デーブ・グロスマン「戦争における人殺しの心理学」